東南アジアでローカルの方々と仕事をすると、最初の頃は
「あーなんでこんなことも出来ないんだこの人たちは!」
「日本は良かった、やっぱ日本人はしっかりしてる!」
と日本礼賛的な感じに陥ります。
その後、賢明な方は「日本の常識は非常識だよね」と適応していきます。
でも、半分くらいの方は日本最高!が抜けずに苦労します。
多くの日本人たちの「日本礼賛」が治らない一方で現地の方々は
「ここがダメだよ日本人」
とぼやいています。
今回は私が実際に某国の現地人経営者(中小企業の社長や若手起業家)たちから言われた、東南アジアビジネスにおける日本人のダメなところ、を書いてみます。
製造業以外の日本企業、そして日本人が海外ビジネスで成功できない理由とも呼べるかもしれません。
目次
①人を信用しすぎる
兎にも角にも一番言われるのがこれ。
だいたいビジネスのトラブルを紐解いていくとここに辿りついたりします。
特に「日本語を話せる」、「日本にいたことがある」という外国人に対して日本人は弱すぎ。
ビジネスパートナーを選ぶ際も、従業員を選ぶ際も少し日本語が話せると簡単に心を許しがちです。
簡単に契約書を巻いてしまったり、簡単に資金を出してしまったり、ダウンペイメント(前金)を受けないまま簡単に商品を納品したり。
私が現在いる国含め、東南アジアでは「自国民同士ですらビジネスの際はお互いを信用しない」ところから始まります。
東南アジアのビジネスは「性悪説」に立たないと痛い目を見るからです。
よく日本での経験を活かして「直感的」に相手の信用を決めてしまう人がいます。
「俺にはわかる、彼(彼女)は信用できるよ」
という人。
ここは声を大にしていいたい。
平和な日本で養われた直感なんて東南アジアでは糞の役にも立ちません。
よっぽど天才的な人でもない限り、普通の日本の尺度で東南アジア人を測ることなんてできません。
相手を「悪者だ」と決めつけるのはよくありませんが、「あらゆる不測の事態を想定しておく(実際発生する)」、「簡単に信頼せず、長期間を使って見極める」ことがすごく重要。
私自身も私の周囲にも「痛い目」を見ている日本人はたくさんいます。
これから東南アジアに来られる方々は同じ轍を踏まぬよう気を付けていただきたい所です。
②相手に利を与える前に利を取ろうとする
ビジネスはGive & Take。最近ではGive & Giveなんて言葉もあります。
誰しも一度は聞いたことがあるはずです。
「ビジネスで成功したいならばまず相手の役に立つことから始めなさい」
これが不思議と海外に出ると薄まってしまうことが多い。
頭ではわかっていても、ついつい自社の利益確定を急いでしまいます。
もちろんビジネスですから利益を上げていくことが前提です。ただ、海外でのビジネスは日本とは違って「アウェイ」。よほど特別な技術でもない限り、日本人なんて「その他大勢」の外国人たちと変わりません。
まず絶大なる信頼を相手から得ることから始めないと。
東南アジアで信頼を勝ち取る方法は一つだけで「相手に儲けさせること」です。
「少しでもいいからまず相手に儲けさせ、それから自分のビジネスの話をする」のが鉄則。
日系企業の本社の方々にはここを十分に理解した上で、現地の目標設定をしてあげてもらいたいものです。あまりに投資回収を急がせると現場は逆に痛い目見ます。
③清濁を飲み込めない(コネクション・賄賂の活用ができない)
私は日本人の素晴らしいことの一つに「清貧性」があると思っています。社会通念として「地道な努力や正しいことを続ければいずれは認められる」という雰囲気があります。
一方でその清貧性がアジアではデメリットとなることも少なくありません。
「正攻法」だけでは戦えないことも多々あります。
一般論として東南アジアではどれだけ実力があってもコネクションをうまく使えない企業は淘汰されがちです。
「社会の公正さ」が先進国よりも著しく低いからです。
残念ながら「地道な努力」よりも「うまくやった奴」が成功しがちな社会です。
政府やお役所、時には軍部や警察とのコネクションは必要になりますし、純粋なビジネスの視点でも「財閥」など既存の強い企業との連携が必要なことが多々。
その際に日本の「正しい努力」信奉が邪魔をすることもあります。
経営者も現地担当者も、本社海外担当者もある程度は「清濁併せのむ」器量が絶対的に必要です。
下世話な話ですが現地で企業運営をすると必ず「使途不明金」は出てきます。袖の下は会計上記載できなかったりしますので…。
蛇足ですがこの手の話で本社から「1円単位で全部明確にしろ」とか言われると駐在員は辛いですね。
信頼される日本人、されどなめられる日本人
沢山の外国人と話をすると、特に東南アジアにおいて日本人は「信頼されている」と言えるでしょう。
期限は守るし、金払いもいい、そして品質には間違いがない。
一方で、「そんなんじゃアジアでやってけないよ」となめられている部分も多々あります。
これを「日本礼賛」で撥ねつけるのではなく、うまく取り込みながら伸びていく東南アジアに入っていきたいものです。