海外キャリア

海外勤務や就職で英語力はどれくらい必要?東南アジア編

今の時代、海外で働くという選択肢はだいぶ身近になってきました。

特に日本のすぐ隣に位置する東南アジアは経済成長著しく、日系企業含め世界中から外国企業、そして働く外国人が増えています。

一方「自分もいつか海外で働いてみたいな…」と思いつつ、「自分の英語力で海外で働くことは可能なんだろうか…?」と不安に思っている人もいるでしょう。

そんなことを書いている筆者はすでに東南アジアで数年働いています。

本記事では東南アジアの話に絞られますが、実際に働いている経験から「海外(特に東南アジア)で働く場合に必要とされる英語力」についてまとめていきます。

目次

日系企業の海外業務で求められる英語力は?

細かい話に入る前に、まず一般的な情報を見てみましょう。

日本企業も日本人も大好きなTOEIC。そのTOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーションが興味深い調査結果を発表しています。

少し古いデータですが、発表されたところによれば「日系企業が国際業務担当者に求めるTOEICのスコア」は660~840点

個人的な意見ですが、TOEICのスコアが高いからといって英語を流暢に使えるわけではありません。が、英語を流暢に使える人でTOEICのスコアが著しく低い人はいないのも事実。自分のレベルを図る一指標にはなるでしょう。

必要とされるスコアにだいぶ開きがありますが、実際働く環境や内容によって求められる英語力はだいぶ変わってきます。

ネイティブ圏で働く場合は問答無用で900以上の高いスコアを求められるでしょう。では東南アジアではどうでしょうか?

 

東南アジアの場合はケースバイケース

東南アジアの場合はケースバイケースです。東南アジアに身を置く筆者の回りでも「かなり流暢に英語を使える日本人」から「海外旅行ぎりぎりレベルの英語力しかない日本人」までいます。

細かく分けすぎるときりがありませんが、「日系企業か外資系企業か」、「日系企業が顧客か、外資系企業が顧客か(現地市場狙いか)」で分けるとわかりやすくなります。

もちろん例外はありますが、おおむね下記のような一定の傾向があります。

日系顧客 外資系顧客/現地市場狙い
日系企業 Conversational
日常会話程度でもイケル
Conversational-Business
ビジネス英語はやや必須
外資系企業 Business
ビジネス英語は必須、だがまだ優しい
Business-Native
問答無用流暢な英語必須

以下、詳しく説明していきます。

 

日系企業で日本人顧客の場合は英語はほとんど使わない?

東南アジアはホットマーケットであり、日系企業が続々と進出しています。

その中には東南アジアの消費マーケットを狙う日系企業もあれば、進出する日系企業を顧客として狙う日系企業もあります。

通常進出した日系企業では日本人駐在員や日本人現地採用社員が働いています。

そのためサポート側の日系企業で働く場合、営業先の顧客は日本人となることが多いです。

このパターンだと海外で働いているとはいえ、仕事では主に日本語を使うことになります。

英語は社内の簡単なコミュニケーションで使う程度。もしかすると社内でもほとんど使わない可能性もあります。

というのも、顧客が日本人の会社では日本語を話せる現地スタッフを雇用することが多いからです。

個人アシスタントや自分の右腕で日本語を話せる人材が付くと、ほとんど英語は使わなくなります。

こうなると英語は「日本語を話せないスタッフと日常会話をする」程度。もしくは「日常生活で最低限使う」レベルです。

さすがにまったく英語が話せなければ生活ができませんが、日常会話程度話せれば十分会社ではやっていけます。

 

日系企業で外資系顧客/現地市場の場合は国による

当然ですが、海外ですので日系企業の中には「外資系企業」を顧客としたり、「現地市場」を狙っている企業も多数存在します。

この場合は社内はもちろん、社外でも英語が必要になります。

ただ、英会話のCMなどで見るような「流暢」なビジネス英語が必要か?というとそうでもありません。

実際に東南アジアに来るとよくわかるのですが、英語圏ではない国では相手も英語を第二言語として話します。

そのため「流暢さ」よりも「わかりやすさ」や「そもそものコミュニケーション能力」が重要です。

あまりに流暢な英語を使うと逆に打ち合わせの相手がついてこれない、ということもあるでしょう。

日常会話にビジネス英語が少しプラスされた程度話せれば、あとは現地で必要な部分を補強しながらやっていけます。むしろ長く働いていくと英語よりも現地語の習得が重視されることもあります。

ただし、英語が公用語として使われる国は別です。具体的にはシンガポールとフィリピン、そしてマレーシアです。

この3国では顧客やビジネスパートナーもかなり流暢な英語を使います。当然こちら側もしっかりとした英語力が必要になります。

 

外資系企業では日本人顧客が相手でもビジネス英語は必要

日本人が海外の外資系企業で働く場合でも「日系顧客部隊」として雇用されるケースも多々あります。進出する日系企業を顧客化していきたいのは日系企業だけとは限りません。

しかしこの場合「日系企業で日系顧客」のパターンとは異なり、日本語を話せるスタッフは社内にはいません。

そのため客先では日本語メインでも大丈夫ですが、社内調整で英語を多頻度で使うことになります。基本的なビジネス英語は使える必要があるでしょう。

ただ、あくまでも「日系顧客部隊」として雇われるので、多少英語力が不足していても容認されやすい傾向があります。

仕事でパフォーマンスを出していれば、英語はあとから勉強すればOK!という雰囲気です。大切なのはあくまでも自分が期待される専門分野で成果を出し続けることです。

 

外資系企業で外資系顧客/現地市場の場合は英語が話せて当たり前

最後のパターンは外資系企業で外国人や現地市場を担当する場合です。

この場合は日本人としての強みや特徴は一切期待されません。一人の「専門人材」として「専門スキル」を期待されます。

そのため「言語の壁はないもの」として採用されます。つまりかなり流暢なビジネス英語を使える必要があります。

東南アジアでこのパターンが多いのはシンガポールです。シンガポールには世界を代表する大企業のアジア統括本部(Regional Headquarters)が集約しています。

海外キャリアとしては最も華があり、高い報酬も期待できますが難易度も競争率も高い選択肢です。

 

英語力以上に求められる素養がある

海外で働くとなると「英語力」に意識が行きますが、実際に海外で働いてみると「英語力」はそこまで重要ではないことに気づきます(シンガポールの多国籍企業アジア統括本部で働く場合は別)。

特に東南アジアでは英語が話せるからといって現地で活躍できるわけではありません。逆に英語がほとんど話せないのにバリバリ活躍している人も多くいます。

せっかくなのでいくつか重要な素養をピックアップしてみます。

 

環境適応力

一番重要なのは環境への適応力です。仕事の能力が高くても海外生活に順応できなければ生きていけません。

「私は海外旅行が好きだから大丈夫!」という人ほど要注意です。旅行で見える海外と、実際に住む海外は全く別ものです。

特に新興国が中心の東南アジアは旅行では見えないことがたくさんあります。

日本と同じ生活を求めて「あれが足りない、これが足りない」となってしまう人には厳しい環境となるでしょう。

月並みですが、変化や不足していること自体を受け入れられる柔軟性の高い人はうまくやっていけるでしょう。

 

仕事の柔軟性

柔軟性は生活だけではなく仕事でも重要です。

ここでは細かく書きませんが、日本の商習慣や日本人の働き方というのは世界でも珍しい部類に入ります。特に東南アジアの新興国とは異なる部分が多くあります。

仕事や会社に対する意識から、法律、人と人との付き合い方など数えればきりがありません。

日本での成功体験が多ければ多いほどついつい「日本ではこうだった…」と言いたくなってしまいますが、そこは日本ではなくて外国です。合わせなければいけないのは自分自身。

日本の良いところは残しつつも、現地に合わせた仕事の仕方に柔軟に調整していかねばなりません。

 

コミュニケーション力

海外にはすごい人がいて、英語も現地語もほとんど話せないのに契約を取ってくる人が存在します。

彼らをよく見ていると言葉以外のコミュニケーション能力がものすごく高いことに気づきます。

具体的には、

  • 外国人相手にも物怖じせず適切な気遣いができる
  • 相手の話をよく聞くので相談される
  • 話の本質を見極める
  • 行動範囲が広い
  • 自分と相手との違いを受け入れる

などを実践しています。

逆に英語が流暢でもコミュニケーションが独りよがりなタイプは海外では活躍できないでしょう。

 

ストレス耐性と孤独耐性

海外では精神的なタフさもものすごく重要です。具体的にはストレス耐性孤独への耐性です。

生活環境や仕事の常識が変わってくることから、ストレス耐性の必要性は容易に想像できるでしょう。特に日本と現地の間に立ったりすると、板挟みにあって大変なことがたくさんあります。

しかし、実はストレス以上に耐性が必要なのは孤独への耐性です。

海外で働くというのは思った以上に孤独です。食事を一人で取ることも増えます。また、仕事の愚痴を思い切り飲みながら言える同僚も、人生相談できる昔ながらの友人も存在しません。

インターネットがあるので昔ほどではないにしろ、それでも孤独は付きまといます。

ここに耐えられるかどうかも重要な素養だと思います。

 

胃腸の強さ

最後です。東南アジアで働くならば胃腸の強さは大事です。

先進国のシンガポールは別ですが、それ以外の国の衛生環境は軒並み一気に下がります。

住み始めた当初はほぼ確実に便が水になる時期がありますし、住み慣れた後にもお腹は壊します。

とはいえ、毎日の食事を高級ショッピングモールの日本食で済ませる、というのも高くつきますし味気ないですよね。

東南アジアで活躍するためには現地飯を受け入れる胃腸の度量も必要なのです。

 

興味があるなら英語を言い訳にせずに出てきた方がいいかも

後半は少し脱線しましたが、東南アジアで働く場合の英語の必要性について書きました。

おそらく日本に住んでいる人が考えているよりも、現地で働く日本人は英語は話せません。

もちろん最低限の英語は必要ですが、一定の英語力があればそれ以降は現場努力の世界です。

それよりも海外や東南アジアに興味がある人は一歩踏み出して来てみるのが重要だと思います。

もちろんきちんとした準備や計画は必要ですが、英語が完璧になるまで待つ必要はありません。

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