日本の将来が見えないせいか、海外へ希望を見出す若い方が増えています。
特に最近は「海外でフリーランスとして生きる」ことが一つの生き方として登場してきた感がありますね。
個人的に海外で生き残れるようなたくましい日本人が増えていくのは良いことだと思っています。
一方、海外で…特にフリーランスとして生き続けることの難易度は伝えていきたいところ。
筆者の周りでは無計画に勢いだけで海外(私がいるのは東南アジア)に住み込み、生活がにっちもさっちもいかなくなり犯罪まがいのことをした若い方もいました。
この記事では私個人の知見(個人事業主)と、私の周囲の海外フリーランスの方の意見を交えて「フリーランスが海外移住する前に準備すべき事項」をまとめます。
- 海外フリーランスとして生きるための事前準備
- 自分が海外に行くべきか、日本に残るべきかの適正
目次
海外フリーランスとして移住をする前に準備すべき事項
あなたが「日本でもフリーランスとして生活していける実力がある」という前提の元で話を進めます。
また「仕事は日本から取る」という前提です。
その上で「海外に拠点を移す前に準備しておいて欲しいこと」を以下に列挙します。
安定した顧客獲得の仕組み
「遠く離れた海外で、お金払いの良い優良顧客をどうやって継続的に獲得するのか?」
この問いに明確に答えられるようになってください。
「オンラインのサービスがあるから仕事は取れるだろう」という甘い考えは今すぐ捨てた方が良いです。
確かにオンラインサービスで新規の仕事を得ることはできますが、オンラインでの案件は「要件を満たせば誰でも良い」というものばかり。
「価格」が判断軸になることが多く、オンラインサービスから得る仕事だけでは余裕のある収入を得ることは難しいです。
また、海外に住んでいると「リサーチ」や「写真撮影」など副次的な相談が来ることもありますが、海外というだけで安く叩かれます。
そこで大事になってくるのが「直接営業」的な動きですが、海外から日本の顧客向けにできることは限られます。
物理的な距離が離れると心理的な距離も離れがち。
あなたにとって日本はすべてでも、日本の潜在顧客やパートナーにとってあなたは「one of them」のその他大勢でしかありません。
以上を想定した上で顧客獲得の仕組みを事前に立てておいた方が良いです。
- 個人のブランド力を強化しておく
- 有力な日本の代理営業パートナーを捕まえておく
- 太筋の契約を日本で作っておく
などの対策はしておくべきでしょう。
専門能力の維持とトレンドキャッチアップの仕組み
海外で個人で仕事をしていると「浦島太郎」になりがちです。
日本にいれば業界人同士で情報交換する機会があります。
飲み会かもしれませんし、組織横断型のチームプロジェクトかもしれません。
一方、海外で個人リモートワークをしていると他の日本人との接点は限りなくなくなります。
無駄なしがらみがなくて良い面もありますが、「専門能力」と「トレンド」に対してあまり良いことはありません。
基本的にフリーランスは「今ある能力でできること」しか発注されません。
専門能力の強化は自分次第。その際業界人同士の交流は良い刺激となります。
また、トレンドについてもネット記事だけで得られる情報量には限界があります。
最新のトレンドが現場でどのように扱われているのか? は複数人で話してみて「そうか」とわかることも多い。
自分以外の「横のつながり」をどのように構築して維持するのか?を考えておく必要があります。
現地の本当の生活費の把握
「海外フリーランス」が注目された背景として「生活費の安さ」があります。
特にシンガポールを除く東南アジアの都市…バンコクをはじめとしてクアラルンプール、ホーチミン、ジャカルタなどなど。
例えばたまに「バンコクなら月10万円あれば生活できる」みたいな話もあります。
まぁ実際10万円あればギリギリやっていけなくもないでしょうが…どのような暮らしぶりになるのか?は事前に知っておいた方が良いです。
確かに、物価上昇傾向とはいえ東南アジアでの物価は日本よりまだ低い。
しかしここで言われる「物価」はあくまでも「現地人目線」での物価。
外国人が暮らすとなると「物価」は変わってきます。
もっと簡単に書くと「東南アジアで外国人が外国人らしい生活をすると母国以上に金がかかる」ということです。
「自分は外国人らしい生活をしないから大丈夫」と言う人もいますが、実際に生活すると多かれ少なかれ「外国人コスト」は必要ですよ。
表面上の数字に惑わされず、海外で暮らしている「日本人」は実際にどれくらいお金がかかっているのか?は調べておくべきです。
就労ビザの知識と準備
どこの国でも外国人は「就労ビザ」が無ければ働くことはできません。
たとえ日本から収益が発生し、日本の口座に振り込まれていたとしても、現地で生活して労働している限りは「就労」と見なされる国があります(というよりこの考え方がMajorityかと)。
また、通常だと就労ビザが無ければ長期滞在はできません。
観光扱いとなるので短期で入出国を繰り返すことになります。
これを繰り返すと国によっては「怪しい…」と目を付けられることになり、違法就労の嫌疑をかけられたり…なんてこともあったりするのが東南アジアです。
ビザについては「自分は大丈夫」なんてことはありません。
移住希望国でのビザの仕組みがどうなっているか?は事前に十分に確認をするようにしてください。
健康管理と家族のケアに対する答え
日本から住民票を抜き、海外居住届を出すと「年金」「健康保険」などの支払い義務が免除となります。
いまさら年金はどうでもよいのですが、気を付けておきたいのは「健康保険」。
海外駐在員の場合、旅行保険の延長で海外居住者向け保険(1年や2年単位)に会社で加入するのが一般的です。
フリーランスの場合は自分で加入の有無から保険の種類まで選ぶことになりますが…この保険というのがなかなかお値段が張ります。
日本の健保と同じ程度かそれ以上。しかし得られる恩恵は日本以下(=日本の医療制度は素晴らしいのです)。
そのため、海外のスタートアップや起業家、フリーランスでは保険に入っていない方も少なくありません。
ただ、2~3年であればいいものの、10年以上住むとなれば話は変わってきます。
海外…特に東南アジアでは食べ物や運動習慣の違い、さらには公害の影響などから体を壊す人も少なくありません。
また、長く住むと自分の両親の状況も心配になるものです。
この辺りの「現実的」な問題をどう対処するかも、事前に想定しておくべきです。
モチベーションを維持する方法
海外で個人の力で生活できるようになってくると、ふと「あれ?なんで自分ってこの国に来たんだっけ?」と思う瞬間が必ず来ます。
生活はできているが「ただ生きている」ような状態です。
現地にしっかりと根を張り、現地ビジネスを展開したり、現地コミュニティに入り込んでいる方は別です。
ただ、「日本から仕事を受けているのみ」の方はこの状態に陥りやすいです。
海外フリーランスで移住する方が増えている中、5年後くらいにこの手の状態に陥っている人が増えていそうだな…と実は心配しています。
日本の田舎暮らしを想定した再検討
上記で挙げたことを考慮した上で、「日本でできないのか?」は今一度考えてみた方が良いでしょう。
「固定費が低い場所で、リモートワークで働く」のであれば、日本の限界集落に移住した方がぶっちゃけ楽だと思います。
言葉は通じるし、インターネットは早いし、水もご飯もお酒も美味しいでしょうし、限界集落だけに大歓迎されるかもしれませんしね。
さらに、いざとなれば両親の元にも1日でかけつけられます。
「それでも海外に来る必要があるのか?」
の答えが見つかるのであれば、海外フリーランスとして生きていけるかもしれません。
まぁ、若い方であれば別に「3年くらい海外に住んでみたいので」という話でもよいかと思います。
大切なことは日本も海外もあまり変わらない
「海外移住」となると、つい「英語は大丈夫かな?現地語って必要?」のように言葉の心配ばかりしてしまうかもしれません。
心配ご無用。
海外とは言え、日本人相手に仕事をするのみであれば、中学生程度の英語があれば大丈夫です。
また、必要となれば人間必死に覚えますのでその点もご心配なく。
それよりも、フリーランスとして永続的な活動ができるかどうか?の方を心配すべきです。
「個人として生きる」のは日本でも大変ですよね。
海外でも変わりません。
フリーランスとして生き抜くために必要なことも、変わらないのだと思います。